辺境の雑記帳2nd

ニュースや時事問題の考察など

テレビ番組での西成区ヘイト

テレビ朝日の番組『アメトーーク』で、お笑い芸人らが大阪府立西成高校(大阪市西成区)を事実無根の内容で貶め、さらに学校周辺の西成区についてもいい加減なデマで地域差別的な中傷をおこなう内容を放送したとして、番組側が謝罪をだし、2019年4月19日の各マスコミでも報道された。

問題の経過

問題となったのは、2019年2月14日の放送だということ。「高校中退芸人」として、西成高校を中退したと自称する女性お笑い芸人「ソノヘンノ女・とも」が、学校の実名を名指ししながら、高校での思い出として「いすを投げないように、いすが机とつながっている」「窓がガラス素材でない理由は、ガラスだと割る人が多いから」「トイレットペーパーは盗まれるからトイレにはなく、職員室に取りに行く」などと、まるで不良行為・無法行為が横行する学校かのようにあることないこと言い立てた。

さらにそれに呼応する形で、共演していた複数の男性お笑い芸人(雨上がり決死隊・宮迫博之、千鳥・大悟)が、学校所在地の西成区へと話題を広げ「僕らも大阪の頃は『西成は行かんとこ』ってみんなで言ってました」「綺麗な10円を12円で売っていた」などと、西成区がまるでおかしな場所かのように差別的な発言を繰り返した。

当該校と大阪府教育委員会などが、番組・放送局側に抗議を出していた。

そして番組・局側が謝罪文を出したという流れ。

問題点

この問題は、以下のように二重の意味でひどい中傷であり、差別的である。

  • 西成高校に対して、「不良が暴れて校舎を壊すような荒れた学校」かのような事実無根の中傷を振りまいていること。
  • 学校所在地の西成区全域に対して、ありもしないことをでっちあげて地域差別をおこなっていること。

高校については、机・椅子一体型は大阪府立高校で多く採用されているものであり、「不良」とは何の関係もない。そのほかの点についても、不良・校内暴力対策によるものではなく全く別の理由だと指摘されている。そもそも、そういう暴れるようなのが集まるような学校ではない。事実無根の内容を言い立てることは、学校関係者への中傷であり、教育活動への妨害行為ではないか。

また西成区という地域に対するヘイトも見過ごせない。この手のデマでのヘイトは何十年も前から繰り返されてきた。見てもいないもの・知りもしないものを、まるで見てきたかのように、事情通を装ってあることないこと言い立てて、「西成区」に対するデタラメなステレオタイプ的イメージを振りまくなど言語道断。「西成区」に対してこのようなことをしてもいいと扱っている事自体が、とんでもない嫌がらせであり、地域住民に対する風評被害である。

自称「中退芸人」が本当に当該校に通学していた経歴があるのは不明だが、西成区に関するネタだと、足を踏み入れたことすらないような「知ったか」「ネットで真実」だけではなく、出身者や関係者を自称してあることないことデタラメで悪い話を盛る輩がいるということは、これまでにもよくみられた。「西成区」だからどんなに悪い話を盛っても許されるとばかりに勘違いしている連中には反吐が出る。

謝罪文の内容に違和感:西成区ではなく「西成地区」?

こんなデタラメな学校中傷や地域ヘイトには関係者から抗議を受けても当然だろうが、その一方で謝罪文の内容に違和感を感じた。

謝罪文では「西成地区」と表現しているが、西成「区」ではなく、西成「地区」とはどういうことなのだろうか。この表現に強い違和感を感じた。

「西成地区」の用法は、調べた限り、以下の傾向が見られた。

  • 行政上の西成区のごく一部にも現象が現れている「あいりん」の言い換え。もしくは同じく区の一部にも現象が現れた「旧同和地区」の言い換え。いずれも「西成区や区内の特定の町」だけに問題を閉じ込めて「あそこは特殊な街」と固定化する性質の課題ではない。しかしそういう現象を「西成」呼ばわりしておかしなこだわり方をして、しかもそれが西成区全域の話であるかのようにすり替えて風評被害を振りまき、「西成区=ガラが悪い・犯罪・貧困・スラム・被差別・ややこしい人が集住している・・・」などと事実に反する勝手なイメージを面白おかしく言い立てたうえにネガティブイメージを固定化しようとする者が使っている用法が目立った。
  • 全国団体や広域的な活動をおこなう団体・組織が、西成区を管轄区域とする下部組織の名称として使っているケース(今回の案件には無関係なので深入りしない)。
  • 西成区そのものをさして「西成地区」というような用法は、調べた限りでは見つけられなかった。

西成区内の特定の地域での特定のステレオタイプ的でネガティブな人物・現象のみを「西成」呼ばわりして「西成区のすべて」扱いすることが、西成区「全域」に対する風評被害である。しかし謝罪文に「西成地区」と使うことで、問題の本質を理解していないのではないか・謝罪するふりをしながら問題を上塗りしているのではないかと疑わざるをえない。

抗議に際して、学校や教育委員会だけではなく、学校や地域とは無関係な余計な「エセ同和」が噛んできたと伝え聞く。そのことから「西成地区」の言い方は、西成区内のかつて同和地区に指定された地域(歴史史料をひもとくと、歴史的には運動団体の拠点作りの巻き添えでどさくさ紛れで指定された側面が強いとも受け止められるが)のみを念頭に置いたとも受け取れる。

このため、「西成区を特殊地域呼ばわりするな」という願いに反して、「特殊地域呼ばわりしたがっている者が絡んでいる」という奇妙なことになり、謝罪文の内容もおかしなことになっているという印象を受ける。

「エセ同和」の思惑とは全く無関係に、番組での発言自体が問題である。「エセ同和」好みの恣意的な間違った方向に行かないように注視しなければならないと感じる。

西成区では、あいりん関係者でもエセ同和利権関係者でもない一般の市民・区民の方が圧倒的に多い。テレビ番組での発言は西成区の一般の住民や縁のある人すべてへの中傷であるのに、特定の「地区」関係者だけ扱いすることは、「利権関係者以外の大多数の住民」への差別・ヘイトではないか。

「西成区」への地域差別・ヘイトの背景

番組で指摘されたようなことは、全くの事実無根である。

しかし「事実に決まっている」だとか、「抗議するのは、痛いところを突かれて逆上しているからだ」扱いでさらに中傷を加える者も続出している。これらのさらなる中傷による二次被害も「西成区」が悩まされてきた重大な風評被害そのもの。決して許されることではない。

西成区の地域の人たちは、このようないわれなき風評被害に心を痛め、何十年も前から風評被害解消を求める取り組みを地道に積み重ね、地域住民主体での街づくりに取り組んできた歴史がある。しかし一部のあいりん関係者や似非同和関係者・マスコミなどが面白おかしく「西成=ガラが悪い街に決まっている」とばかりに、「西成」の地名を何かおかしなもの・特殊なものかのように結びつける中傷を繰り返し、地域住民の取り組みを無視したり冷笑したりしてきた。

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ヘイトを蒸し返し強めた一因が維新

さらにここ10年では、大阪維新の会も同じ手口を使って地域ヘイトを繰り返す側となった。

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維新(特にひどいのが、橋下徹と、大阪市議・井戸正利)が「大阪都構想」のために西成区をスケープゴートにして、ことあるごとに西成区をヘイトし続けた。

橋下徹は市長時代の2012年4月20日、「西成特区構想」と銘打って西成区役所で懇談した。その際に「区役所での懇談だけでなく地域の取り組みの現場の雰囲気を見てほしい」との要望に対して、「セキュリティの関係で自由には行動できません。街の状況は車上視察となりました。」とツイッターで発言した。これは「西成区は車から降りられないような危険な街」と暗に発言しているとも受け取れる危険なヘイト発言である。

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また2015年の大阪市廃止解体の住民投票の際には、他の地域ではほとんどいわなかったにもかかわらず、西成区だけわざわざ名指しして「西成区がどうの」というヘイトも、維新や「都構想」賛成派、マスコミなどから執拗に振りまかれた。

中央区や西区あたりの維新信者からは「都構想そのものには賛成するが、西成区と一緒になる区割りが気に入らないからあえて反対する」「西成区と一緒になる区割りは気に入らないが、大義のために鼻をつまんで賛成する」というヘイトが多く聞かれた。

また西成区の維新組織は「西成区は住みやすい落ち着いた街であるにもかかわらず、事実に反する風評被害で嫌な思いをしてきたから、都構想で西成区の地名をなくせば解決」というすり替え宣伝をおこなっていた。「事実に反する風評被害」の前半部分は正しくても、「都構想」と騒ぐことによってその風評被害をさらに蒸し返し、厄介者扱いで騒がれた形になった。

これらのことで、テレビ番組など公的な場で西成区への地域差別発言同然のことを言っても許されるという風潮を蒸し返し強めたのではないかという気がしてならない。

維新信者も、ありもしないデマをでっちあげての西成区ヘイト発言を繰り返している。

自称「西成区在住」の維新信者がツイッターで、「西成区の中学校では、不良の襲撃に備えて身を寄せ合う状況で授業どころではなかった。英語では中学校で習った単語が他の中学校出身者の半分以下だった」(2018年2月17日)だとか、「40年前の西成区は銃声が聞こえる街だった」(2017年2月11日)などと、ありもしないことをまるで見てきたかのように話を盛って、とんでもない大嘘を吐いていたのも見たことがある。そして維新信者は、そんなのを橋下・維新が変えたというデマまで追加している始末。

今回のテレビ番組での発言も、そういうものの延長線上にあるという気がしてならない。