辺境の雑記帳2nd

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IR誘致賛否を問う住民投票条例案が大阪府議会で否決される

2022年7月29日、大阪府議会。

大阪府などが誘致を進めているIRについて、「大阪府におけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致の賛否を問う住民投票条例の制定を求める直接請求」が有効となり、住民投票条例の制定の是非が審議された。

2022年3月から5月にかけて集められた署名は、大阪府全域で約21万筆が集まり、うち19万2773筆の署名が有効と判断された。このことにより直接請願は、大阪府内の選挙名簿に登載されている有権者の50分の1の条件(約16万人)を満たし、有効となった。

IRについては、カジノ誘致は反対という立場からも、住民投票が提起された。またそれだけにとどまらず、「大阪府などのやり方では、公金や税金を無尽蔵につぎ込むことになり、計画に問題がある」「住民の世論が拮抗している以上、住民の意向を聞く機会を得てからの判断でも遅くはない」などの立場から、国レベルの施策ではカジノ・IRそのものを否定していない政党の関係者・支持者も含めた広範な府民が、住民投票に参加し、また署名を記入した。

2022年7月21日に条例制定の請求が、代表者から大阪府知事宛に請求され、府庁の担当者が受理した。

住民投票条例制定の請求

この日、21万筆の署名が、各市町村・行政区ごとに段ボール箱に入れられ、約200箱・総重量約800kgがトラックに載せられて大阪府庁に運ばれた。署名をした一人一人の願いが詰まっていることになる。

7月29日の府議会

そして2022年7月29日、臨時府議会での審議。

吉村洋文大阪府知事は、法的な手続きに沿って議案を出すが、住民投票は否定するという見解を示した。

府政与党の維新が多数を占めるもと、審議の行方がどうなるのか注目された。

共産党(2人)と「民主ネット」会派(立憲民主党、2人)は明確にIR誘致に反対を示し、また住民投票条例の設置にも前向きだった。住民投票そのものにも、それぞれの政党・議員のスタッフや地域の党員・支援者が、所属政党の立場を持ち込まずにあくまでも「住民投票条例制定を求める署名活動の趣旨に賛同する一個人・一府民」の立場を貫いて住民投票署名活動に携わったも聞いている。

府議会では交渉会派は5人以上というしばりがあり、それ以下の少数会派には代表質問ができないなどの制約がある。

同じように「5人以上の会派に代表質問を認める」としている大阪市会では、2020年9月市会での、大阪市の廃止・解体・いわゆる「大阪都構想」の住民投票の是非を求める審議の際、その議会での議題がその一点だったこともあり、共産党(4人)と「国民の生活が第一」会派(2人。のち、自民党の一部議員と合流し「自民・くらし」会派に再編)がその議会限りの臨時の統一会派を組んで代表質問権を得たということはあった。

しかし今回の大阪府議会では、共産と立憲を足しても4議席であり、5議席には届かないという困難な条件で、大阪市会でしたような「臨時の統一会派」という選択はできなかったことになる。

共産党議員団は議長に対して、少数会派にも代表質問の機会を設けるよう求める申し入れなどもおこなったが、かなわなかった。

また自民党系の議員・候補者の一部も、一個人・一府民の立場で住民投票署名活動に携わったとも聞く。

そのような条件の下で開かれた府議会。

自民党は、出された条例案については、住民投票実施には賛成の意向を示したものの、条例案の原案で「定住外国人にも投票権がある」としていたことについては認められないとして、その部分を「外国人の投票は認めない」と変更した修正動議を出した。

採決は、修正案→原案の順でおこなわれた。

自民党は修正案に賛成した上で、原案には反対した。

自民党の一部議員でつくる会派「自民・保守の会」(3人)は、修正案賛成、原案は退席・棄権とした。

共産党は修正案には反対、原案に賛成とした。民主ネット、および無所属議員の1人会派「旭区民の会」は、修正案・原案ともに賛成した。

一方で、維新と公明党は住民投票は必要ないとして反対し、条例案は否決された。

議場のヤジと議員の態度

条例案否決直後、傍聴席からはヤジや怒号が飛んだ。ヤジの内容は下品であり、ほめられたものではない。

しかしその一方で、議場から応酬するような動きを見せたり、条例制定を求める住民を笑いものにするような維新議員の様子が、中継で確認できた。

誰の声かまではわからないが、傍聴席からのヤジに対して、議場から議員が傍聴席にヤジを飛ばし返しているようにも聞こえる声も入っていた。

その声と関係があるのかはわからないが、MBS(毎日放送)のネット中継の中継カメラはその直後、永井公大府議(維新・住之江区選出)にズームアップした。永井府議は、マスクを着用していたので口元の動きまではわからなかったものの、傍聴席の方を振り向きながら、傍聴人をせせら笑っているようにも見える動きをしていた。永井府議の隣席の前田洋輔府議(維新・八尾市選出)も笑っているように見えた。

正直、なんだかと感じる。住民の声の重みを受け止めないということなのか。

府民の声を

21万票の署名を伴う住民投票請求が否決されたことは、非常に残念に感じる。府議会は住民の声を聴かないということなのか。

2023年4月には統一地方選挙があり、大阪府議会議員選挙もおこなわれる。今回の府議会での様子、住民投票条例案に対する各会派の対応も参考にして、住民の声を反映できるような議員を増やしたいと願う。