辺境の雑記帳2nd

ニュースや時事問題の考察など

「でんでん」考

安倍首相が2017年1月24日、参議院本会議の答弁で、「訂正でんでんという指摘は全く当たりません」と発言し、「云々(うんぬん)」の読み間違えではないかとネタになっている。

安倍ちゃん

単なる読み間違えなら、普通は「おかしいな」と感じて読み間違いに気づくものなのに、あまりにも堂々と読んでいて訂正も何もしなかったことも、非常に不審ではある。

安倍ちゃんは2016年3月、答弁で保育所を「保健所」と誤読しながら気づかず、議場が騒然となって初めて気づくという失態も犯したことがある。

http://oskweb.wpblog.jp/post-4099.html

いやまあ「訂正という指摘はでんでん当たりません」なら、ザ行がダ行に転換する和歌山弁で「全然」のことかよと意味が通じるけど、これでは通じなくなってしまう。

一般的にいえば、読み間違いそのものは必ずしも、いちいちあげつらうものではない。

「SM宮沢」こと宮沢洋一氏が現職の経済産業大臣当時に「川内原発」を「かわうち原発」といったことや、島尻安伊子氏が現職の沖縄北方担当大臣だった当時に「歯舞諸島」が読めず「はぼ・・・なんだっけ」といったことなど、担当分野の基礎知識に関わる問題での致命的読み間違いなら別だが、一般教養の範囲なので、本来なら別に流せばいいのかもしれない。

安倍ちゃんの場合は発言の文脈の状況から、ここぞとばかりに反撃されるような形にもなっている。

安倍ちゃん、都合が悪くなると対立勢力をムキになって攻撃する傾向がある。過去には「日教組」などと野次を飛ばしたこともあった。今回の読み間違いも、蓮舫民主党代表を攻撃する際に飛び出したものである。普段からの反発もあって、ここぞとばかりに話題にもなったのかと推察する。

「担当分野の基礎知識もない+対立勢力攻撃の文脈」の両方を兼ね備えて飛び出したのは、橋下徹の「おぎのちゃや」

http://oskweb.wpblog.jp/post-3340/

「おぎのちゃや」発言は、「あいりん地域の改善は、橋下維新になって初めておこなわれた。歴代の市政は何もしなかった。特にあいりん地域に近接する西成区山王地域が地盤で3代にわたって市議を務めた柳本顕氏の一族があいりん地域の改善を妨害してきた」という嘘・デマの文脈で攻撃する中で生まれた。

そもそも「柳本一族があいりんの改善を妨害した」というのはデマである。2009年に平松市政のもとでおこなわれた「萩之茶屋小学校前の不法屋台撤去」は、市長や国会議員・市議などがそれぞれ現地視察をおこなったり、柳本顕市議も2008年12月に市会で質問したことも力になっている。

この他にも、先代も含めた「柳本一族」の市議や、他にも西成区選出の歴代市議は自民党・公明党・共産党・民主党系の党派・会派を問わず、「大阪市は、あいりんに他所から来る日雇い労働者や生活保護者の対策ばかりで、地元環境への配慮は後回しになっている。あいりんの人たちへの対策や貧困ビジネス撲滅と同時に、地元住民にとっての環境の改善や、あいりん=西成の悪いイメージが先行して西成区全域への風評被害になっている現状を変える方向で動くべきではないか」と市会で質問するなど、地元住民の立場に立って少しずつ地道に改善を図ってきた歴史がある。

しかし、飛田新地の顧問弁護士出身の橋下は、「あいりん・飛田新地の一部の人達だけが西成区の全て」という、あいりん関係者やそれに乗ったマスコミが煽り立てるような一面的な理解しかなく、「西成区は地元の人が静かに暮らしている街で、隣接する住吉区・住之江区・阿倍野区・大正区などでは『○○区だから』と何か変な現象を区の名前に結びつけることがないのと同様、おかしな現象と結び付けられて異常に食いつかれて騒がれるとか、スティグマを貼られるいわれはない」という事実すら理解できない・理解しようともしなかった。

その発想のもとで「西成特区構想」が進められた。「西成特区構想」の発想自体、「あいりんの否定的現象を面白おかしく騒ぐために『西成』の地名を勝手に使う」もので、あいりんの人たち(特に貧困ビジネス)と一部の狂信的な維新信者だけは喜んだが、一般の西成区の住民や出身者など西成区に縁がある人にとっては「風評被害を強めただけ」と嫌がられる形になった。

橋下維新のもとで進んだように見える施策は、単に前市政までの取り組みをそのまま継承しただけにすぎない。前市政までの「遺産」なのだから、良く見えて当然であろう。

むしろ橋下のせいで、「西成=あいりんの否定的現象」とする誤ったイメージが蒸し返されて強められた。「大阪都構想」をめぐる議論で、大阪市廃止・解体と特別区再編に関して、(あいりん地域だけではなく行政区としての)西成区をどこに押し付けるかという「ババ」「ジョーカー」扱いされる報道が相次いだことからも、橋下維新がおかしな偏見を煽ったのは明らかではないか。

それをごまかすために、柳本氏に攻撃の矛先を向けた文脈で飛び出した「おぎのちゃや」。

あいりん地域と地理的にほぼ重なるのは萩之茶屋(はぎのちゃや)地域なのに、その地名が読めないという大失態。西成区どころかあいりん地域のことも知らずに「西成」「あいりん」と騒いでいたことになる。

安倍ちゃんの「でんでん」は、橋下のように担当分野の基礎知識がなかったのではなく、一般教養がなかったというまた別の問題だが、橋下と同じく、対立相手を不要に煽り立てて攻撃する文脈で飛び出したことから、しばらくはネタにされるのかもしれない。