辺境の雑記帳2nd

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特別区の数以前に「大阪都構想」自体が否定されている

吉村洋文大阪市長・大阪維新の会政調会長は、大阪市の廃止・解体、いわゆる「大阪都構想」について、「維新の立ち位置を明確にしたほうがいい。市議会議員や市内選出の府議会議員の意見を最大限尊重して、区の数を絞り込みたい」として、2018年1月には4区案・6区案のいずれがいいか、維新の会としての方向性をまとめる方針を示した。

NHK関西NEWS WEB『大阪都構想 4区か6区絞り込み』 2017年12月28日 17時57分 大阪市の吉村市長は、平成30年秋に住民投票を行いたいとしているいわゆる「大阪都構想」の区割りについて、4区と6区のどちらが望ましいか1月には、大阪維新の会としての方針を決めたいという考えを示しました。 いわゆる「大阪都構想」の区割りをめぐっては、大阪市の今の24区を4区に再編する案と6区に再編する案をもとに法定協議会で議論が進められています。 これに関連して、大阪市の吉村市長は記者会見で、「維新の立ち位置を明確にしたほうがいい。市議会議員や市内選出の府議会議員の意見を最大限尊重して、区の数を絞り込みたい」と述べ、来年秋に行いたいとしている住民投票を見据えて、4区と6区のどちらが望ましいか、1月には、大阪維新の会としての方針を決めたいという考えを示しました。

だが、「大阪都構想」の問題はそもそも、新しい区の数をどうするのか、区の範囲をどうするのかという問題に矮小化されるべきものではない。

大阪市が廃止され、解体されて、自治権が現在よりも後退・制限された特別区にされるというのが、「大阪都構想」の本質である。

2015年5月17日の住民投票で、大阪市の廃止・解体は明確に否決された。維新も「断念する」と表明しながら、その後なし崩しに持ち出しているというものである。

大阪市の廃止・解体では、大阪市に持っている財産・税金を一度府に吸い上げて、府から改めて交付金の形で分配することになり、住民自治が狭まることになる。

現行の大阪市に入る収入は、すべて特別区に分配されるわけではなく、財政的に立ちゆかなくなることが危惧されている。財政面でのメリットはないとも指摘されている。

また維新が「どこの現行行政区とどこの区をくっつけるか」というごまかしにばかり終始したことで、市内の各地域で地域対立なども生んだ。

極端な例では、西成区への風評被害である。行政区としての西成区は、大阪市では平均的な住宅街にすぎない地域が大半である。また行政区としての西成区と「あいりん」とは地域的にも完全に同じというわけではないし、概念としても別のものである。あいりんは元々の地域土着の人が起こしている問題ではなく、都市化や産業構造によって地方から人が流入したことによって起きた都市の課題であり、また地域としては現在の浪速区や中央区をはじめとした広域に関係する話でもある。たまたま、ここ近年の現象が顕著に現れている地域が、現行行政区では西成区北部の一地域になる萩之茶屋地域周辺にかかっているだけである。

しかし「大阪都構想」とそれに付随した「西成特区構想」を打ち出した維新のせいで、「あいりんの否定的な現象を面白おかしく言うこと」の代名詞として「西成(区)」の地名を蔑称的に使われる風潮が強まり、区全域が「特殊地域」「ババ」扱いでヘイトされる風評被害を強めた。

他の地域でも、福島区選出の維新議員が住民投票の際、「大阪都構想になれば北区とくっつく。否決されれば此花区とくっつく。それでいいのか」などと、地域対立を煽るような演説をしたという情報もある。

このような地域対立を生み出すような悪宣伝が、再びおこなわれる恐れもある。