大阪市廃止・特別区設置の住民投票、いわゆる「大阪都構想」。賛成の側の維新が、自分たちにとって不都合な事実を「デマ」だとすり替え、「デマを信じている人が多い。デマに惑わされるな」というデマを叫ぶ場面が多くなっている様子。
10月12日の告示前後のツイッターでも、「デマ」攻撃が目立っています。
🚔デマに要注意!🚨#大阪都構想 は敵ではございません!
騙されないでください🤜 大阪 #都構想 の疑問は、副首都推進局までご連絡ください💁♀️#大阪維新の会#維新#YES都構想#吉村洋文#松井一郎#大阪は一つになって強くなる pic.twitter.com/VpbpPnGoRB — 大阪維新の会【YES!都構想】 (@oneosaka) October 11, 2020
午前中は #藤田文武 議員とボランティアスタッフさんと長居公園を歩き、スーパーでスポットを3ヶ所。 都構想説明会。 デマ情報を信じている方が多いです。都構想が実現しても、 区役所→無くなりません 水道料金→上がりません 敬老パス→無くなりません 生活保護→無くなりません#都構想に賛成を pic.twitter.com/mk6QZowIZp
— いとう亜実(大阪市会議員・住吉区) (@itoami_ishin) October 12, 2020
引用は最小限にとどめますが、こんなのばっかり。ほかにも確認できた範囲では、「東とおる後援会」「藤田文武衆議院議員」などからほぼ同じ内容が発信されていました。
ほかにも、複数の維新関係者が、同趣旨の内容を記した「デマに要注意」と掲げたパネルを使って街宣している様子の写真も多数上がっています。確認できた範囲では、前述の伊藤亜実大阪市議・藤田文武衆議院議員のほか、金城克典大阪府議・藤岡寛和大阪市議・辻淳子大阪市議・佐々木りえ大阪市議などがそのパネルを使っていた様子。
「デマ打ち消し」とするデマは、上記のツイッターのように、「区役所」「水道料金」「敬老パスなどをはじめとした住民サービス」を出している場合が目立ちます。
しかしすべて、維新の言い分は不正確、維新こそがデマを振りまいています。
大阪市が廃止されるということは、その内部組織である24区各行政区の区役所は必然的になくなります。
維新はそのことをごまかすために、特別区移行後に現在の行政区に「地域自治区」を設け、その地域自治区の事務所を「区役所」と呼ぶというごまかしに終始しているだけです。
現行の行政区区役所を、特別区移行後に地域自治区事務所に転用するというだけ。「大阪市の区役所」と「特別区の支所」では権限が大きく違います。
またそもそも、特別区は大阪市と比較して、できることが限られています。
現行の区役所でできたことが、特別区の地域自治区事務所(区役所)ではできなくなる可能性もあります。
土地や建物を引き継いだだけで、中身は全く別のもの。同じ名前にしたところで、全く別のもの。
またさらに、特別区移行後の体制として、協定書で想定されている体制では特別区区役所本庁の業務が著しい人員不足で回らなくなる可能性があり、維新が「区役所」と呼ぶ地域自治区事務所を統廃合して本庁職員を確保すること、また跡地の売却なども視野に入れる可能性が出ると指摘されています。
現時点では確かに白紙ですが、「絶対に上がらない」ともいいきれないことになっています。むしろ上がる危険性が高くなります。
大阪市廃止により、上下水道は大阪府に移管されることになります。
大阪市域の水道の運営については、府議会に諮られることになります。
また現大阪市の水道は、大阪市域での供給となっています。大阪府全域をカバーしているわけではありません。
大阪市内選出議員は3割に過ぎず、7割を占める市外選出府議の動向が大阪市域の運命を左右することになります。ここが、都議会では特別区選出議員が7割を占める東京都との大きな違い。
大阪市の現在の水道料金が他市と比較して安いからといって、「他市水準に合わせる」名目で容易に引き上げられる可能性があります。
なお維新側は、水道管老朽化問題の深刻化や、政令指定都市・横浜市で水道料金の値上げが決まったということをあげ、「大阪市のままでも水道料金は上がる」などと宣伝しているようです。
しかしそれは「都構想」・大阪市廃止議論とは全く別の次元の話です。逆に特別区だと上がらないという保障もありません。
大阪市では経営努力などにより、水道料金を上げない努力をしながら、老朽化した水道管のメンテナンスなども進めていたりしています。しかし「都構想」で老朽化対策になるかはどうかは、直接関係ないこと。
確かに現時点では、個別の事業・施策について「○○がなくなる」と決まったというわけではありません。
しかし特別区の仕組み上、「なくならない」とは言い切れません。「状況を勘案すると、なくなるおそれが高い」――特別区移行後は、大阪市でおこなってきた各種制度がもたなくなり、大幅に後退する――というべきものになっています。
このことは、維新の側がよく必死で否定する「敬老パス」だけでなく、保育所・公営住宅・ゴミ処理・公園や街路の営繕・健康保険など、あらゆる分野にかかります。
政令指定都市・大阪市が廃止されて跡地が特別区に移行されると、現大阪市で使われていた財源がそのまま特別区に入るわけではありません。一度大阪府に移行してから配分されるという形になり、思うように財源が得られなくなる危険性が高くなります。
また大阪市廃止・特別区設置に伴う初期コストも膨大となり、特別区移行後は財政的に苦しい自治体運営を迫られることになります。
そのため、今までの大阪市でできていた住民サービスが、思うようにできない可能性が出てきます。財源がないこと、またそもそも大阪府や一部事務組合に事務が移行して特別区の意向では決められなくなることなど。
何が削られるかという個別具体的な事業を決めるのはそのときの特別区や一部事務組合の意向でしょうが、多くの事業について「見直し」や「廃止・断念」「値上げ」などを迫られる危険性があることになります。
また各種住民サービスが「保障される」といっているのは、あくまでも2024年12月31日から2025年1月1日の特別区移行の前後だけ。それ以降については、「維持に努める」といっているだけ。2020年時点での大阪市の水準をそのまま維持するとはいっておらず、そういうことをおこなえる裏付けもありません。大阪市のうちにあらかじめ削減することも考えられます。