辺境の雑記帳2nd

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「米10kg」給付で支援?

吉村洋文大阪府知事が、府内の18歳未満の子どもがいる世帯に対して、児童1人あたり「米10kg」を配ると言い出している。

2022年11月25日のマスコミ取材で公表した。物価高騰対策での子育て支援とし、財源は約80億円とみられ、国の地方創生臨時交付金を活用することにしているという。

子育て支援自体は別によいだろう。しかしその手段として「米の現物給付」というやり方が効率的なのか。疑問が残る。

発送方法の具体的な内容についても、現時点でははっきりしない。

支援するのなら現金給付の方がよいのではないかとも思える。

米10kgといえば、大阪府内のスーパーで2022年11月時点では、安いものでは3000円前後からある。

そこに、具体的にどのような手法で給付するか現時点でははっきりしないが、給付手続きに関する担当者の配置・米の手配などの事務費や、対象者の自宅に届けるための配送業者の手配費用がかかる。

手紙などと違い、10kgの荷物を多くの場所に配送するとなると、それなりに配送費用も業者手配の手間もかかる。個人の小包1個に単純に当てはめて試算した場合、米10kgだと、1個1300円~1400円前後になると見込まれる(元国営、黒猫、飛脚、カンガルー、フクツーの5業者のサイトでの料金表情報を参考に、大阪府内同士、10kgあるいは小包100サイズで試算)。多少割引がきいても1個あたり1000円以上にはなるだろう。配送も非効率というほかない。街の米屋やスーパーに委託するにしても、それくらいの費用がかかると見込まれる。

「おこめ券」や専用の交換券などを発行し、利用者が近所あるいは都合のいい場所のスーパーや米屋に出向いてレジで引き換えなどの方法もあるだろうが、その場合でも店の手間も増えることになる。

いずれにしても、米の現物価格に加えてそれなりの委託料が上乗せされるということにもなる。

またそれ以前の話として、食文化の多様化や個人のライフスタイルなどもあり、米を一律現物給付という手法が必ずしもベストな手法となるとは限らないという問題も出る。農村部の実家から米を送ってもらえるので不要だという家庭だとか、あまり米を食べない食生活だとか、乳児から食べ盛りの中高生も含めて一律の量を送ることで多すぎる家庭も出るとか、特定の銘柄をひいきにしているとか、そういう個別の条件なども無視して米を一律に送りつけても、具合が悪いという気もする。

使い道を限定しない現金給付のほうが、各家庭で自分たちの実情に合った使い方をできることもあり、効率的なのではないかと感じる。

大阪府での支援施策のおかしさ

大阪府では2022年6月、18歳未満の子どもを対象に「デジタルギフト券」1万円分を送付し、文具・書籍・おむつなどの日用品購入に充ててもらう形での子育て支援などもおこなったことがある。しかし業者との委託契約の関係で、利用状況などは業者側の企業秘密として、大阪府が把握できなかった、さらには未利用分は委託業者の取り分となったという事態もあった。

米の給付についても、具体的な手法はまだ未定だということだが、「思いつきでの人気取り」「やったという印象づけ」「対象となる子どもに十分還元されず、一部の委託業者のみが儲かる」ということにもつながりかねない。このことは税金の使い方としてもよくない。