辺境の雑記帳2nd

ニュースや時事問題の考察など

圧力での出版断念、それでいいのか

2023年12月、あるニュースが駆け巡った。

2024年1月にも出版予定だったある書籍が、一部界隈から批判を浴び、出版元が出版を断念したという由。

当該書籍はトランスジェンダーの問題を扱っていた様子。しかしその内容が「トランスヘイト」だと主張する勢力から、激しい抗議があり、出版元は断念を発表した。

当方は「トランスヘイト」には強く反対する立場を鮮明にした上で、その一方でこのような手法での圧力は、出版の自由や表現問題からみて、やりすぎなのではないか、というか別のところにしわ寄せが来て抗議の手法としてはまずいとも危惧している。

この手法での「キャンセル」は、めぐりめぐって反差別や表現の自由などを主張する側にも、全く同じ手口で襲いかかるのではないかという危惧を感じる。

そもそも、その書籍の内容が「ヘイト」なのか、出版されたものを読んだわけでなく、広告などの断片的な内容でそのような主張をおこなっているとも見受けられる。

批判するにしても、対立相手側の主張をしっかりと検証した上で、適切に反論していくことが必要なのではないか。

脅して気に入らない言論や主張を力でねじ伏せて黙らせる、抹殺するという手法は、相手側におかしな口実を与え、暴力の連鎖を生んでいくだけではないかとも危惧している。

そして、今の時点では自分が「相手を黙らせることができる側」に立っていると認識して振る舞っていても、そんなものはその場の力関係などなどによって変動し、状況が変化すると、今度はそういうことをしている側が、巨大な権力の側から黙らせられる側に立つということにもなりかねない。

声の大きい者が、力の大きい者が、権力的、暴力的に、気に入らない相手を力でねじ伏せるなど、言論や表現の立場にとっては、極めて危険なものであり、反民主主義的な行動だと感じる。

この問題では、「反差別」や「リベラル」を自称する者の一部に、このような「キャンセル」を正当化するものもしばしば見られるが、それでいいのだろうか。