辺境の雑記帳2nd

ニュースや時事問題の考察など

ハラスメントに無頓着な「界隈」、それへの批判相次ぐ

2024年1月、某界隈が炎上している。

2024年1月15日~19日に静岡県熱海市で開かれた日本共産党第29回大会。方針を決め、新役員を選出した。

新委員長に「たむとも」こと田村智子参議院議員・前副委員長が就任し、これまで長年委員長だった「Cさん」こと志位和夫氏が議長になり、またCさんの前に委員長を務めていた不破哲三氏が党本部の役職から完全引退したことなどの人事の話が取り沙汰されている。

人事のことはマスコミ的にはネタになりそうというだけで、全体的にはそんなものかで、取り立てていうことではないだろう。

ハラスメント

トップの顔よりも、この間共産党を取り巻いてきた「ハラスメント被害」の問題が噴出する流れが進んでいるようにも見えてしまう。

大会では、執行部からの大会議案報告の後、代議員*1が各地の取り組みや議案への提案などを発言する討論の時間が設けられ、その後に執行部が結語(討論のまとめ発言)をおこなったのちに採択され、次期役員選挙に移るという流れ。

2日目・1月16日の討論では、ある代議員から、以下のような発言があった。

共産党大会での発言要旨(赤旗より)

それに対して、結語(討論終結後の執行部からの討論まとめ発言)に立ったたむともが、発言者を糾弾するような発言をして、マスコミなどでも報じられ、また党員や支持者と思われる人からも強い批判が出ている。

www.jcp.or.jp

 党大会での発言は、一般的に自由であり、自由な発言を保障しています。しかし、この発言者の発言内容は極めて重大です。私は、「除名処分を行ったことが問題」という発言を行った発言者について、まず、発言者の姿勢に根本的な問題があることを厳しく指摘いたします。――(中略)――あまりにも党員としての主体性を欠き、誠実さを欠く発言だといわなければなりません。

 発言者は、「希望の党」の小池百合子代表の「排除」発言をもちだして、「あのとき国民が感じた失意が、いま私たち共産党に向けられていると認識すべき」とまで発言しました。反共分裂主義によって野党共闘を破壊した大逆流と並べて、党の対応を批判するというのは、まったく節度を欠いた乱暴な発言というほかありません。

――(中略)問題のこの政治的本質をまったく理解していないことに、発言者の大きな問題があるといわなければなりません。

これは、「発言者の姿勢に根本的な問題がある」「この政治的本質をまったく理解していない」など、発言者への人格攻撃、ハラスメントだと受け取られるものである。

発言者本人への、また会場にいた代議員・ネット中継を通じて視聴していた人たちなどそれを目撃して不快感を感じた不特定多数への、ハラスメントだというべきものである。

引き金となった「松竹問題」

問題になったのは、いわゆる「松竹問題」で共産党の対応についてである。

元共産党本部職員で、退職後は出版社編集者として一党員の立場になっていた松竹伸幸氏が2023年1月に著書を出版したことに対して、共産党は内容を問題視し、2023年2月に除名処分をおこなった。

これについては、松竹氏の主張の是非については触れない。というより、松竹氏の主張そのものに同調する党員や党支持者は、観測の範囲ではほぼ見当たらない。「外部の人からそういう意見が出ることもありうるよな。それに対してどうていねいに説明していくかは、研究課題」程度の話ではある。

それよりも、共産党の態度があまりにも悪すぎて、「松竹氏の主張には同調しない、あるいは中立だが、それとこれとは別で、手続き的に問題があるのではないか」という指摘も出されている。当方の印象としても、それに近い。

気に入らない相手、「敵」とみなした相手なら、道理を無視してでも強権的なことをしても構わない、というわけではなかろう。

しかし共産党が「国会議員やオピニオンリーダーなどでもない、編集者とはいえども一個人レベルに近い松竹氏に対して、党本部や赤旗編集局のかなり上の方の役職の人が、感情的な強い筆致で糾弾するような文章を赤旗に繰り返し載せる」「松竹氏が党規約に基づいておこなった再審要求を否定する」「松竹氏批判の内容も微妙に変わっている」などの強硬な態度を繰り返すことで、多くの党員や支持者からは「手続き論」的な意味や「ハラスメントにも見える」という意味で、疑念がでている状況になっている。

また「松竹問題」とその対応がマスコミで報じられることで、党外の有権者からも疑問がでて、現場で活動している党員はそれに対する回答に苦慮し、活動しにくくなっている状況になっている。

党大会で発言に立った代議員の発言趣旨は、党の松竹氏への対応の判断については特に踏み込んだ見解を述べているわけでもなければ、否定をしているわけでもない。その上で、党の対応が十分ではないから地域の有権者の方から誤解がでて困っている、党の立場をわかりやすく説明できるような「ていねいで透明な対応」をしてほしいと求めていると訴えたものだと読める。

しかしたむともは、発言論旨をねじ曲げ、「松竹氏には問題があるから処分は当然」「(発言者を、松竹氏に同調するような人物だと暗にレッテル貼りをするような形で、)発言者の態度に問題がある。発言者は党の方針を理解していない」かのような糾弾にすり替えている。

これでは全くかみ合っていない。発言者の発言論旨を無視してねじ曲げ、指摘に耳を傾けずに一方的にがなり立てているものだと言わざるを得ないだろう。

そして、たむともに同調した党員らが、発言者やその周辺に圧力をかけたり、SNSで中傷なども繰り返している。

ハラスメントは集団的

ハラスメントは、たむとも個人の暴走ではない。マスコミなどで批判された結語は、前日1月17日の討論終結後に熱海の党大会会場で開かれた中央委員会総会で、内容も含めて一字一句検討された上で、中央委員会として採択されたものだという。

宮本岳志衆議院議員(中央委員)が、決定の経過について、facebookで触れている。

www.facebook.com

facebook利用者からのコメントに対して、宮本さんは、具体的な議論の経過は詳細には出せないとしながらも、中央委員会総会での激論があってあの内容を全会一致で採択した、だからハラスメントという批判は当たらないなどとうかがわせるようなことを返信している。

何だかなあという印象をもつ。

むろん、たむとも個人の発言ではなく、中央委員会の総意だという決定プロセスを指摘した宮本さんの指摘は、客観的事実であるのだろう。

しかし問題はそういうところではない。その決定プロセスの中で、中央委員が、つるし上げにも見えるようなハラスメントや打撃的な発言を容認し、組織的に決定したということである。

ということは、たむとも個人だけを批判の矛先を向けることは筋違いだという意味ではそうなのではあるが、それをハラスメントだとは思っていないという中央委員会がハラスメント体質だということになってしまう。

2022年の事件との比較

2022年11月に共産党が全国の党所属地方議員を対象にした会議で、小池晃書記局長がたむともにハラスメント発言をしたとして問題になり、謝罪する事案があった。

この事件は、全体報告をおこなっていた小池さんは、ある地域での活動報告として、その地域の地方議員の名前を間違って読み上げ、それに気づかないまま報告終了となった。司会進行を務めていたたむともが、報告終了直後に「先ほどの報告で、議員の名前を間違ってお伝えしてしまいました。正しくは○○議員でした。訂正します」と指摘した。その直後に小池さんがたむともの席に行き、何やら話しかけていた。議事はネットで全国中継されていたが、声などはそのときは聞こえなかったので何が起きたのかわからなかったが、「議事進行上の打ち合わせ」にしては不穏な雰囲気が流れていたことは伝わっていた。

その後誰かが、録画映像の音声を増幅してネット上に公開した。そこには、小池さんの声がマイクに拾われていた。「間違えてないから。訂正しなくていいよ」などとたむともを高圧的に叱責する内容で、これはパワハラではないかと問題になったという経過。

小池さんからたむともへのパワハラは、議事進行上の過程で突発的に発生したもの。

その一方で党大会での結語は、小池さんの事件では被害者になったものの、今回は報告者として加害に関与したたむとも個人の資質だけでなく、集団的なパワハラだという意味では、より一層悪質だといえる。

こんな連中

また大山氏の2日目の発言に先立ち、1日目・1月15日の討論でも、内田裕・福岡県委員長が、松竹氏などを念頭に置く形とみられるような文脈で「こんな連中」という発言をおこなっている。これはなぜか、赤旗では、紙面スペースでの都合なのか削られている。しかし1日目の討論はネット中継されていたので、視聴した党員からも「これはない」「安倍晋三首相が、自身の政策への反対派に対して街頭演説で放言し批判された『こんな人たち』と、どこが違うのか。『連中』という表現の分だけ、より一層たちが悪い」という批判が出た。

ブロガー・漫画評論家としても知られる紙屋高雪氏は、共産党福岡県委員会の職員でもある。紙屋氏が「松竹問題」についての党組織での議論について、ブログでこういう議論の経過があったと議事録的な内容での可視化を示すようなエントリを記載したところ、そのことが党規律違反ではないかと問題になったと聞く。そのことは、一部マスコミにも報じられ、「党規律違反調査のため」として長期間出勤停止になり、党幹部から紙屋氏へのハラスメントもあったという情報も飛び交っている。

その背景もあり、また直接的には紙屋氏とは別件のテーマでの発言だとはいえども、松竹氏が福岡県委員会に言及した発言をしたところ、それを共産党攻撃と受け取った福岡県委員会が噴き上がったような形になっている。

福岡県委員長は党大会発言で「こんな連中」のほか、「福岡県内で赤旗配達中の事故で死去した党員の家族が、『亡くなった家族は赤旗が好きだったから』と、故人の仏壇には、線香の代わりに、赤旗を音読で読み聞かせている」なとという話もしていた。なかなかシュールな発言であり「そんなこと、関係者同士の雑談ならまだ許容できても、公式の場でいわなくていいだろ」と思うようなものではあるが、それも赤旗の発言要旨ではカットされていた。

迷走している

共産党、マジックマッシュルームでも食ったのかとしょうもない突っ込みを入れたくなるほどの迷走案件が次々と相次いでいて、どうしたものなのか。

しかも「過去に自分も似たようなハラスメント被害に遭った。トラウマがフラッシュバックした」と訴える、党員の声も多く出ている。

共産党の主義主張や政策的な内容には異を唱えるつもりはない。むしろ、国会議員や地方議員の活動を見るに、なくては困るという勢力ではある。

しかし、どのような立場であっても、人権尊重とハラスメントの一掃は、この社会で活動する組織としては最低限必要なことではないのか。

松竹さんの主張の是非については、必要ならばていねいに対応すればいいだけで、それ以上のことはない。しかしそれに対して、一人の人間を組織外に強制的に追い出すという最大限の処分で、組織運営としてはもっとも慎重に事実認定しなければいけない案件にもかかわらず、乱暴な対応を取る共産党執行部の対応と、それに同調して煽る「信者」の対応こそが、事態をこじらせ、どさくさ紛れでの反共攻撃になっている。仮に相手の主張に全く道理がないものだと仮定しても、ああいうやり方では相手に反撃の隙を与えて泥沼化させるということになる。そういう原因を作ったのは、執行部の側であり、それで困っているのは現場の党員だろう。

しかも、「もっとていねいな対応をしようよ」程度の提言を出した仲間に対しても荒ぶって、あたかも問題発言扱いで、高圧的な態度で糾弾する、これでは余計におかしくなるのではないのか。

 

このあたりの指摘が、当方の実感とも合致する。

 

*1:各都道府県ごとに党員数などに比例して選出人数を割り当てて選出。県幹部や議員だけでなく、職場や地域の党員も選ばれる。